こんにちは
設計士をやっていて多くの方のご要望に上がるのがシューズクローク、いわゆる土間収納です。
この記事を読んでいる方の中には
「シューズクロークって一体何?我が家には必要なのかな?」
といった疑問をお持ちの方、そして
「シューズクロークは採用したいけど、設計のポイントや注意点を教えて」
とのご要望がおありの方がいらっしゃるのではないかと思います。
今回は、住宅設計士として働く私が
「シューズクロークについてのあれこれ」や、「設計ポイント」をご紹介します。
シューズクロークとは
シューズクローク、別名は土間収納とも言われることもありますが
床は土間、つまり土足で入ることができる玄関の収納ですね。
戸建て住宅に限らずマンションにも人気の間取りで、近年は多くの物件に採用されています。
棚を配置して靴を収納できるのはもちろんのこと、生活スタイルや間取りによって様々な物を収納しておけるスペースです。
特に、ご家族が多く靴がたくさんある家庭や、アウトドア用品・家庭菜園がご趣味の家庭に人気ではありますが、単純に「玄関収納は多い方がいい」という思いだけでシューズクロークを作ってしまうのは危険です。
収納する物の種類や量などしっかり計画しておかないと、使いづらいシューズクロークになるのはもちろんのこと、他の部屋のスペースを圧迫することにもなりかねません。
後述するシューズクロークの設計ポイントを抑えて、家づくりを進めていただけると、使いやすい間取りができるのではと思います。
シューズクロークの種類(3タイプ)
まず、シューズクロークと言っても
広さや動線、収納する物によって3つのパターンに分けることが出来ます。
ここでは大まかに3タイプに分けてご紹介します。それぞれメリット・デメリットも解説していますので、それぞれのご家庭に合ったタイプを選択していただければと思います。
収納タイプ
まずは収納タイプです。
シューズクロークの扉を開けると棚が並んでおり、シューズクロークの中に入らずに靴の取り出しが出来るタイプになります。
最もシンプルなスタイルかと思います。このスタイルのメリットデメリットを見ていきましょう
メリット
まず、一番のメリットは省スペースであることです。住宅全体のスペースは限られていますので省スペースでたくさん物を収納でき、他の部屋やスペースにゆとりが出来ることになります。
そのため、シューズクロークよりも他の部分の広さのほうが優先度が高いと考えている方にはオススメです。
また玄関の照明だけつけていれば、シューズクロークの中のものが暗くて取り出せないといったことも無いですし、
ほかにも間取りにもよりますが、わざわざ靴を履かずにシューズクロークの物を取り出すことも可能なので、小物や靴を手早く取り出せるという点はメリットかと思います。
デメリット
反対にデメリットは、大きな物を収納できないことです。
収納タイプでは扉を開けるとすぐに棚がありますが、この棚の奥行きは長すぎると逆に使いづらいこともあり、30〜40cm程度の奥行きの棚を設置することが一般的です。
それに伴いシューズクローク自体の奥行きも、浅めに設計するので大きなものは収納しにくいでしょう。
お子様がいらっしゃるご家庭などはベビーカーや三輪車、また、アウトドア用品・家庭菜園用品、スポーツ用品など
これらをシューズクロークに収納したいと考えていらっしゃるなら、収納タイプ以外の後述する2つのタイプがオススメです。
また、デメリットとまではいきませんが「扉を付ける必要がある」という点も注意です。
収納タイプでは扉がないと中身が丸見えになってしまうので、扉を付けたほうがスッキリするのではないかと思います。
扉も意外と価格が高く、見積もりが上がる原因の一つですのでご注意ください。
ウォークイン
シューズクロークと聞くと、このタイプを想像される方が多いのでは無いでしょうか?広さや棚の配置などは様々ですが最低1畳ほどあればこのタイプも検討できます。
このタイプはシューズクロークの中に入って物の取り出しをするスタイルで、土足を履いて利用する小さなお部屋というイメージです。
メリット
このタイプの一番のメリットは、ある程度奥行きやスペースがあるので、大きな物を収納できる点です。
先述した、お子様のベビーカーやアウトドア用品等をお持ちで、家の中に収納したいと考えている方は、このタイプがオススメです。
つまり、「大きなものを収納したい!」といったご要望にピッタリです。
その他にも、間取りによっては扉を設けない計画も人気で、
一見シューズクローク内の荷物は見えないので見た目のスッキリ感は出しつつも手が塞がった状態でシューズクローク内に物を置くことが可能になります。
また、傘立てを置いても邪魔になりにくく、棚のスペースをたくさん使える間取りにすることができそうですね。
デメリット
まずこのタイプのデメリットは、人が入る通路の部分を確保する必要があるということです。通路は実際に物を置けるスペースではないので、住宅の中ではデッドスペースになります。
そのため、シューズクローク全体の広さに対する有効な収納スペースという意味では、先述した収納タイプに軍配が上がります。
また、窓や照明が無いと中身が暗くなってしまうことや、
玄関からシューズクロークまでの動線や玄関土間の幅をしっかり打ち合わせしていないと、意外に狭くて大きなものを運んでいけない、といった問題にもなりかねません。
シューズクロークに収納したい物のイメージを持った上で計画することがオススメです。
ウォークスルータイプ
こちらも近年人気が高まってきた間取りで、玄関側と室内側にそれぞれ入口を設け、通り抜けできるタイプのシューズクロークです。
メリット
このタイプは通り抜けできるので、生活動線がしっかり決まっていればそれぞれに合った動線を作ることができます。
たとえば、玄関からシューズクロークを通り抜けてそのままキッチンに入る動線を確保することで、買い出し後の食品をいち早くキッチンに置ける動線、
他にもシューズクロークを洗面所やウォークインクローゼットに繋げると、帰宅後の手洗いや着替えに便利な動線、とすることができます。
他のメリットとしては来客用動線と家族の生活動線を分けることも可能です。来客が多いご家庭では玄関を常にスッキリさせておけるので安心ですね。
デメリット
デメリットは何としても、動線を事前にイメージするのが難しいことではないかと思います。住宅を計画する前に、その家に住んだ時のイメージができないと、
実際住んでみて「何となく作った動線を使わない」といった失敗にもなりかねません。
そのため、今の生活スタイルをよく見返りながら、生活動線をしっかり計画していきましょう。
また、先程と同様ですが通り抜け出来る反面、通路が多くなることによってシューズクローク全体の面積は大きくなりがちです。他の部屋や玄関が小さくなり、結果的にシューズクローク以外の部分の使い勝手が悪くなる恐れもあります。
各部分の広さの優先順位をハッキリさせた上で、シューズクロークのイメージを計画段階で確認しておきましょう。
シューズクロークに収納できるもの
ここまでシューズクロークのタイプを3種類ご紹介してきましたが、そもそもどんな物を収納するかまだはっきり考えられていないという方も多いかもしれません。
そんなお悩みの方は、収納できる物の一覧に加え、収納スペースの目安について書いていますので、↓こちらをご覧ください。
使いやすいシューズクロークにするポイント5選
ここまで読んできてシューズクロークは採用したい!とお考えの皆さんに、
シューズクロークを計画するための最重要ポイントをステップごとに5つご紹介します。
収納したい物の選定
何といってもまずは、「シューズクロークに何を収納したいのか」これを考えずには始まりません。
先程の“シューズクロークに収納できるもの”を参考にしていただき、収納したいものをリストアップしましょう。
また、シューズクロークの他にも下駄箱を設けるのかどうかで、シューズクローク内に収納する靴の量は変わってくると思いますが、
一般的な靴の所有量は1人当たり10足(多い方で20足程度)とされています。家族分の靴を収納できる棚のスペースを確認するためにも、靴の数は必ず確認しましょう。
その他にも、傘やレインコート、外で使う掃除道具などは皆さん共通でお持ちではないかと思います。
収納したい物のリストアップが出来たら以下の項目も要チェックください。
広さ
収納量から必要な収納面積を考えてみましょう。
土間部分には大体6段〜8段の可動棚を設置できますので、幅はどの程度必要なのか考えてみましょう。
例えば4人家族で靴が40足あり、8段の可動棚を付けるとします。
1段当たり5足収納するので靴の幅を考えると、棚の幅は1m〜1.5m程度必要になるという訳です。
もちろん他の物を収納したいご要望がある方は、その面積も考慮してくださいね。
動線
収納量が把握できたら、動線・使い方について考えてみましょう。
先述しました、3タイプを参考にしていただき、シューズクロークのスタイルと使い方をイメージしてみてください。
各スタイルの特徴は先述しておりますが、一言でまとめてみると
収納タイプは
小物や靴をたっぷり、かつ省スペースで収納したい方向け
ウォークインタイプは
お子様用品や趣味の物など大きな収納が欲しい方向け
ウォークスルータイプは
シューズクローク先の動線計画にご希望があり、生活スタイルがイメージできる方向け
シューズクローク以外の面積(他の部屋や玄関など)との優先順位を付けつつも、使い方をイメージしてどのタイプのシューズクロークがお好みか考えてみてください。
明るさ・換気
シューズクローク計画で欠かせないのが「明るさ」と「換気」です。
そのためにまず考えられるのは「窓です」外の光が入るので日中は照明を付けずに物の出し入れができたり、換気が出来たりと快適なシューズクロークになります。
その反面、窓の部分は収納棚が付けられないので収納力は落ちますし、そもそも間取りの制限も出てきますよね。
そのような場合は、シューズクローク内ではなく玄関部分に窓を設けてシューズクローク内に光を取り込む計画にしたり、人感センサー付きの照明でシューズクローク内に入ると自動で照明がつく計画とすると快適です。
換気についてですが、開く窓が近くに設置出来ない場合はシューズクローク内に換気扇を設けるなどで工夫できそうです。
匂いが籠らないことと、湿気対策にもなりますので必ず検討しましょう。
忘れがち!これでシューズクローク計画は完璧に
ここまででおおよそのイメージは出来ているかと思いますが、最後におまけとして忘れがちな細かな項目も見ていきます。
これでシューズクロークのイメージはバッチリになるのではないでしょうか。
傘/レインコート
各家庭必ずお持ちの傘そしてレインコートは、玄関のどの部分に収納するか決めておく必要があります。
シューズクローク以外に下駄箱を設置する予定の方は、その中に収納できる場合もありますが、収納場所が無い場合もあるでしょう。
そんなときはシューズクローク内に傘を引っ掛けるパイプを設置したり、傘立てを置くスペースを用意したりする必要があります。
また、レインコートは畳んで収納する分には問題ありませんが、雨の日に使用した後、濡れたレインコートをどうするか考えてみましょう。
浴室に物干しパイプがある方はそこに干したり、他にも屋根付きのベランダに干しておく方やすぐに拭いて畳んでしまう方もいるでしょう。
シューズクロークや玄関にレインコートが掛けられるパイプやフックがあると意外と便利ですので検討してみてください。
洗面台/コート掛け
コロナ禍の影響もあり、帰宅後すぐに手を洗うのが習慣となった方も多いですよね。そんな影響もあり、玄関近くに洗面台を設けるスタイルが人気になりつつあります。
そのため、特にウォークスルータイプのような通り抜けできるシューズクロークを採用するときはその近辺に、洗面台を設置したいのか、考えてみましょう。
この場合は、洗面脱衣室内にもう一つ洗面台を設置するのか、それともそこには洗濯機のみにして洗面台は1つにするのか、それらを検討することも必要になりそうです。
洗面台の設置位置ごとの特徴や注意点については別の記事でご紹介したいと思います。
洗面台と同様に、玄関付近にコートなど上着を掛けられるスペースがあるとそこに掛けてから室内に入れるので、ウイルスなどを室内に持ち込みにくく、
また、2階建てのお家ではわざわざ上着を脱ぐために2階に上がらなくて済むので便利ですね。
自転車
大事にしている自転車がある方、雨の日は室内に置いておきたい方はシューズクロークに収納できそうか検討してみましょう。
シューズクローク内に収納できるスペースが確保できるかどうかはもちろんのこと、玄関ドアからシューズクロークまでの自転車の回転スペース、押してくる人の通るスペースを確保する必要があることも考えて計画しましょう。
資源ごみ
新聞紙や段ボールなど、意外と場所を取るので収納場所に困るのではないかと思います。屋外に保管スペースがない場合はシューズクローク内に置いておくと便利ですね。
防災セット
非常時に手早く持ち出せる場所に置いておきたい防災用品や非常用持ち出しセットですが、シューズクロークに収納される方も多いです。リュック1つ程度のものであれば場所は取りませんが、食料や飲料をたくさん置いて置かれる方はそのスペースも確保しておきましょう。
他にもシューズクロークに入れたいものを考える際にはコチラをご覧ください↓
まとめ
この記事では、
シューズクロークとは
シューズクロークの種類(メリット・デメリット)
使いやすいシューズクロークにするポイント5選
について書いてみました、いかがでしたか。
何かと物が溢れがちな玄関かと思いますので、皆様の家づくりにこの記事が参考になれば嬉しいです。
このブログでは家づくりについて色々と情報を発信していきますので
是非ご覧ください。
【玄関まわりに関する参考記事】
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